2020/09/04

沈香

沈香と呼ばれる香木をご存じでしょうか。

ここ最近ではテレビ番組などで高額商品として紹介されたりしています。

それを見てご存じな方もいらっしゃると思います。

手に入れることがなかなか容易ではない為、

一般に知られるものではありませんが、

みなさんもどこかでふとその香りを聞いたことがあるのではないでしょうか。

私達の日常のなかにその香りが潜んでいるかもしれません。

例えば、お寺に訪れた時に漂ってくる良い香りは沈香の香りかもしれません。

いつき(弊社)の沈香の知識は全て大阪にある長川仁三郎商店さんから

教えていただいたもので、私自身もお香や沈香に興味を持ち、勉強し、

凄くハマっております。

様々なお話を私なりにまとめてコラムを書きました。

気になる記事だけでも目を通していただけたらと思います。

 

1.沈香とは

2.沈香の産地と種類について

3.歴史的背景

4.沈香の形状(姿物・刻み・粉末・ツメ・馬蹄・笹)

5.いつきが扱う今後の沈香について

 

1.沈香とは

正式名称は沈水香と言います。英名はaloes wood。

ベトナム・タイ・ラオス・カンボジア・インドネシア・マレーシアに

広く分布するジンチョウゲ科アキラリア属または、ゴリスチラス属の常緑高木です。

 

[ 沈香ができている産地の上空からの写真 ]

 

常緑高木なので高さが大きくなると30mくらいになります。

全ての沈丁花科の木から沈香ができるわけではないようです。

沈香ができる要因として、外的に木に傷ができたその後に

その傷口を治すように植物脂(タールのような油分)が集まってきて、

それが固まってできた物が沈香となります。

外的な傷というのが、例えば、動物が爪を研いだり、ひっかいたりして

できたり、虫が木に群がったものをキツツキのような

鳥が口ばしでつついて穴をあけたり、カビやキノコの菌糸類が付着したり

それらの外的要因から自分を守るかのように

タールのような油分を出して、集めてくることを沈着凝集と呼ぶようです。

イメージ的に人間でいうと「かさぶた」にあたるものではないでしょうか。

沈着凝集が起こり沈香ができて長い時間が経つと枝が朽ちて

地面に落ちて泥に埋もれていたらしいです。ですから、昔の人は

沈香は泥の中でできると考えていた事もあるようです。

木の中で沈香になり、長い年月をかけるとその香りが素晴らしく

良い物ができます。水に沈むくらい油分が多い沈香になると

相当な年月が経っている物だと思われます。

水に沈む香木と呼ばれておりますが、全てが水に沈むわけでもありません。

近年では、逆に水に沈む物を見つける方が困難ではないかと思われるくらい

希少な存在となっております。水に沈むくらい樹脂分が集まるには

50年以上かかってできた沈香ではないかという事です。

近年、沈香は乱獲されてしまいワシントン条約の「附属書Ⅱ」に指定されております。

Ⅱ種に関しては原産国の許可が無ければ取引ができないというものです。

海外に輸出したりする場合は原産地証明書など必要な書類がないと送ったり

できないということです。それだけ希少な物だということですね。

沈香は漢方薬として、医薬にも使われているそうです。

口に含んで食べてみると辛くて舌がピリっと感じます。

薬としての効能は、鎮痛、鎮静作用、抗菌作用などがあるようです。

焚いても、その効能があるかわからないですが、気持ちが落ち着くのは

精神安定及びリラックス効果もあるのかもしれませんね。

 

 

2.沈香の産地と種類について

沈香はどういった所でできるのでしょうか。

東南アジアでも気候が比較的温暖な地域でできるようです。

ベトナム・タイ・ラオス・カンボジアで採れる沈香をシャム沈香と呼びます。

インドネシア・マレーシアで採れる沈香をタニ沈香と呼びます。

シャム沈香とタニ沈香という呼び方は商人用語で使われていたらしいです。

シャムの語源は昔のタイ王国をSiam(シャム)と呼ばれていた事から

その地域の沈香をシャム沈香と呼ばれるようになりました。

タニの語源に関しては実際の話はよくわかっておりません。

都市の名前であるという話もありますが正式にわかっておりません。。

 

沈香の種類は大きく分けて、2種類になりますが、例外としてインドのアッサム地方で

採れる沈香もあるようです。アッサム沈香はシャム沈香にもタニ沈香にも属しません。

上記に書かれているように沈香の種類というのは、地域によって分けられている事がわかります。

また六国五味(りっこくごみ)という言葉があります。香道では沈香の香りを細かく表現するために

6つの国(地域)と5つの味で香りを表します。

 

伽羅(きゃら)・羅国(らこく)・真那賀(まなが)

真南蛮(まなばん)・寸門多羅(すまとら)・佐曽羅(さそら)

そして、五味が、甘・辛・酸・苦・鹹(しおから)です。

産地や採れた場所によって香りの筋が違ってきます。

同じ産地や場所で採れた沈香は全て同じかというとそうではありません。

産地は重要ですが、それ以外にも木の中でどれだけの時間をかけて、熟成されているかが

重要で、香りにも違いが出てきます。

それだけ沈香というものは奥が深いというわけです。

シャム沈香と呼ばれる沈香は、基本的に甘・酸が目立ちます。

タニ沈香は、辛・苦が目立ちます。

しかし、シャム沈香が甘・酸だけかというとそうでもなく、辛味や苦味もある物もありますし、

タニ沈香でも辛い中にも甘・酸という感じ方をする物もあります。

上質な沈香になるにつれて感じられる香りの五味が多彩になります。

沈香の最高峰とされる伽羅は五味が全て感じられます。

 

 

3.歴史的背景

日本書紀に記されている文章で、

「推古天皇3年(西暦595年)4月、ひと囲いほどの香木(沈香)が

淡路島に漂着した。島民は薪と共に竈(かまど)で焼いた。

すると類い希なる良い薫りを漂わせた。これは朝廷に献上した。」

1400年以上前から沈香というものが日本で認識されているという事ですね。

仏教伝来が538年の飛鳥時代からとされてるので、日本で仏教が伝えられてから

沈香が焚かれていたのかと想像がつきます。

そもそも、なぜ仏教で沈香を焚くのでしょうか。

それは、お釈迦様が生前に沈香の香りが好きであり、

よくお香(沈香)を焚いていたそうです。

悟りを開く時にもお香を焚いていたという逸話もあります。

お釈迦様が涅槃に入られた時に

その弟子たちがお釈迦様が好きで

あったお香をお供えとして焚き

ました。それが供香、いわゆる

お焼香のはじまりと言われてます。

 

お焼香と聞くと、お葬式で初めて見たと言われる方もいらっしゃるのでは

ないでしょうか。現代のお焼香で沈香を焚くというのはあまり見かける

事はないかもしれません。しかし、その昔は沈一味と言われ、沈香のみを

焼香していたようです。

鑑真和上が渡日されてから、沈香と漢方薬を調合するという事を

教わったとされています。その調合が今の現代にも伝わっていて、

沈香の香りをより良くするために調合するという考えの元、焼香というものが

作られているそうです。また焼香について詳しくは後日コラムにしたいと

思っております。

奈良時代に、聖武天皇に蘭奢待と言われる香木が献上されます。

蘭奢待というのは、沈香の中でも最上級品の伽羅であると言われてる説も

ありますが、沈香だという説もあり、香りを焚く事が時の権力者しか許されておらず、

蘭奢待が伽羅なのか知る術がありません。正倉院に収められて国の宝物の1つとされております。

正倉院展に何年かに1度展示されるようですので、是非、一度見て欲しいところです。

私自身も蘭奢待を直接見た事がないため次回出展される時には

正倉院展に足を運びたいと考えております。

南北朝時代から室町時代にかけて禅の教えが広まり、茶道や華道や能のような文化や香道が生まれます。

一部の上流階級の人達が香木を焚いてそれを判別したり、詩を書いて表現したりと

仏教以外で香を焚いて楽しむという文化が根付きました。それは現代の香道に至ります。

歴史を振り返ってみると、沈香を焚いてこられたのは、僧侶や貴族、

時の権力者の方々なので、私達が沈香という物をあまり知らないのは当然の事なのかなと

思います。一般的に商人が扱えるようになったのは江戸時代以降からだと聞いております。

沈香木というのは本当に貴重な物で素晴らしい物であることが歴史でわかりますね。

 

4.沈香の形状(姿物・笹・馬蹄・ツメ・刻み・粉末)

沈香には採れた部位や加工によって様々な形があることはご存じでしょうか。

沈香の成り方については説明させていただいた通り、沈丁花の木の中での樹脂(タール)が

集まってできた物なので、その集まり方によって、姿物の形も様々です。

 

動物が爪でひっかいたりして幹の表面に傷ができ、そこから沈香になった部分は、笹状の形に

見える姿をしています。その形から「笹」と呼んでおります。

沈香になる樹脂(タール)が木の中にある毛細管を通って流れるので、

このような形になっているそうです。

 

次に、「馬蹄」の紹介をしたいと思います。

字のごとく、馬の蹄に形が似ていることから

馬蹄と呼ばれています。

これは、幹と枝の付け根部分になります。

枝が折れて、その折れた後に沈香になったようです。

 

ツメと呼ばれる形の沈香もあります。

親指の爪ぐらいの大きさの物が沈香のツメと

呼ばれています。沈香を採取した際に、笹の先などが

欠けた物を集めているようです。

サイズ的に焚きやすいという事から、

このツメ状を好んで焚かれる方も多いようです。

 

 

これらを見ていただくと、沈香が採取された部位によって

形状が変わってくるのもわかっていただけると思いますが、

香りの筋も変わってきます。形を見て沈香のどこの部分なのか

想像して香りを楽しんでみるのも良いですね。

弊社では、沈香の年代物の姿物も扱っております。貴重な香木ですが、年代物は香りも特別良いです。

→プレミアム香木をお買いもとめはこちら

 

これらの、姿を焚きやすく刻んだ物を、「刻み」と呼びます。

お焼香をする際に焚かれる最も

ポピュラーな形が刻みではないでしょうか。

姿物の場合は削りとって焚くので、削る場所によって香りが少し変わりますが

刻みの場合は、篩(フルイ)で通して大きさを均一に合わせるので、

香りが平均化されます。

→沈香の刻みをお買いもとめはこちら

 

もっと細かくした物で粉末の沈香もあります。

粉末状の沈香はお線香の原料等で使われるようです。

また、お寺でよく見かける常香盤と呼ばれる

四角い香炉があるのですが、その香炉で灰の上に抹香と呼ばれる

お香を線状に引いて、お香を焚くという焚き方があります。

それを燃香(常香)と呼ぶようですが、

その抹香を沈香の粉末で焚く場合もあるようです。

→沈香の粉末をお買いもとめはこちら

 

5.いつきが扱う今後の沈香について

弊社で扱う沈香は、現地からしっかりとしたルートで仕入れた天然の沈香を扱いたいと思っております。

そのため、色々な指導を受け、品質もチェックしております。

沈香は、科学的根拠が無く売り手と買い手が沈香だとお互い認めてしまえば、それが沈香になります。

見た目や、上匂いでは正直わからない部分もあり、ネット上での販売となると、香りのチェックも

していただけないのが現状です。弊社が扱う沈香が、消費者の皆様にお買い求めいただいて、

焚いて間違いない沈香だという商品だけを扱いたいと思っております。

ネット上だけでわからないという事があれば、直接連絡いただけると物をお見せする事もできます。

是非ともお気軽にご連絡ください。